親にお金を借りる時、気をつけたい「贈与税」と上手な頼み方

あなたは親からお金を借りたことはありますか?

理由としては、住宅ローンや車のローンの頭金、結婚式の費用、学生の学費など…、親からお金を借りる可能性は意外と多いものです。他にも生活費に困ったときや失業したときなどお金を借りる理由は様々です。

でも親子だからこそ借りる際に気を付けなければならないことがあります。

親からお金を借りる場合には贈与税についても知っておいたほうがいいでしょう。また、「贈与税を非課税にするためにはどうするか?」なども含め、広くご紹介していきます。

目次

親からお金を借りるためのおすすめの理由

親からお金を借りるためのおすすめの理由

親からお金を借りるためのおすすめの理由

親からお金を借りるとしたら、どんなときですか?
「今月あとちょっとお金が足りない」「家を買うために頭金が必要」など金額も理由も様々だと思います。

借りる側も立派な大人ですので、借りる時も気軽に「お金貸して」とは言いづらいですよね。だからといって消費者金融や銀行系カードローンで借りると、高い利息で返済時に苦労してしまいます。

親から借りる場合は、利子がないことが多いですし、あっても少ないと思うので無駄なお金がかからず返済時の負担が少なくて済みます

下手な言い訳はやめましょう

なかには、スムーズにお金を借りるために言い訳を考える人もいるかもしれません。
浪費癖があったり遊んでお金が足りなくなった場合は、罪悪感もあって正直には話しにくいですよね。

よく使われるおすすめの言い訳としては、「結婚式やお葬式などの急な出費が重なってお金がない」「スキルアップのための費用としてお金を貸してほしい」など、前向きな理由です。

しかし、もし後で嘘だとバレた場合には親が傷つきますし、親子関係も悪くなるかもしれません。
親にお金を借りるときには、変に言い訳など考えず、理由を正直に話して誠実な態度でお願いすることが大事です。

家族・親戚・友人に信頼されやすくなる「お金を借りる理由」は?

相手が親でもお金を借りるときは借用書が必要!「贈与税」にならない方法

相手が親でも借用書は必要!「贈与税」にならない方法

「親と子の間なんだからお金を借りる際に借用書なんて必要ないのでは?」と考える人も多いですが、答えは「NO」です。親と子の関係だからこそ、借用書を作るようにしましょう。

お金を借りるときに借用書を作ることは、親との信頼関係を保つほかに、「贈与税」の対象になることを防ぐためでもあります。

親、親戚から財産をもらった時にかかる税金「贈与税」とは

借りるお金が少なければ問題ないのですが、1年間に借りるお金が110万円を超えると贈与税の対象となります。
逆に借りるお金を110万円以内におさえれば贈与税の対象となりません。
だからといって、110万円を毎年親から借りていたら税金逃れとみなされますので注意しましょう。

「お金をもらったわけではなく借りただけなのに、なぜ贈与税なの?」と疑問に思いますよね。
それには、このような理由があります。

親からだと借りるときの利子や期限を決めずにお金のやりとりだけしてしまうことも多いと思います。
親のなかには「余裕ができたら返してくれればいい」など、お金が返ってこなくてもいいと思っている人も少なくないのではないでしょうか。

この場合、「お金を返す保証がない」ということで贈与とみなされてしまいます。同様に無利子でお金を借りることも贈与税の対象となります。

贈与税の対象とならないために、お金を親から借りる場合でも返済額や期間などの条件、利息を決めて借用書を作成しておきましょう。

高校生や大学生など学生でも贈与税はかかるの?

申告者・納税者が学生の場合でも、贈与税の申告をする義務があります。ただし、日常生活や教育資金に関する必要なお金を受け取った場合は贈与税はかかりません。
さらに30歳までに使い切らないと贈与税がかかってくるので注意しましょう。

利息や記録など、贈与税の対象を外れるための方法

では、借用書に記載する利息はどのように決めたらいいのでしょうか?

利息をとることに戸惑う親も多いかと思いますが、消費者金融や銀行よりも低い金利でいいので、利息をつけましょう。
低すぎても贈与とみなされる場合があるので、1%以上に設定しておくと良いです。

また、親と子の間でお金の貸し借りがあったことがわかるように、銀行の通帳などに記録を残すようにしておきましょう。

借用書のテンプレートはこちら

住宅や車を買うときの頭金を借りるときの注意点

住宅や車を買うときの頭金を借りるときの注意点

住宅購入を決めたとしても、とにかくお金がかかるので自分だけだとお金を用意するのが難しい場合も多いですよね。
住宅ローンを組んだとしても頭金がかかったり、引越し費用などの出費が考えられます。

車を買うにしても高い買い物になるので、ローンを組んだときの頭金が必要になったり、一括で買うときの足りない分のお金が必要になります。
家ほど高いお金ではないですが、金額によってはこれにも贈与税がかかります。

住宅や車の購入に関するお金を親から借りることができる方は、先にもお伝えしたように、「借用書」と「利息」を忘れないように注意してください。
贈与税とみなされ税金を支払うくらいなら、親に利息を払ってそのお金を使ってもらう方がいいですよね。

子供の教育費は条件付きで非課税になる

子供の教育費は条件付きで非課税になる

子供が何人かいると、養育費や教育費にお金がかかります。子供が学校を卒業するまでは、子供の人数分のお金が必要になってくるので、かなりの出費です。

親からすれば孫のためのお金になるので、借りる理由としても貸す理由としても相談しやすいのではないでしょうか。

子育てのためにお金を借りる場合は、110万円を超していたとしても贈与税が非課税になる場合がありますのでご紹介します。

結婚・子育て贈与

平成27年4月に創設された「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」で、結婚や子育てにかかる費用を一括で1000万円まで(結婚資金のみでは300万円まで)贈与ができる制度のことです。

とはいえ、自由に資金を手渡せるわけではありません。
金融機関(信託銀行など)の口座を経由して、資金(贈与)のやりとりを行い、贈与された側が引き出す際にも、目的に合った使い方をしたことを証明する(=領収書などの提示)必要があります。

教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置」は、教育資金として使うのに限定した資金に関して、1500万円まで(塾や習い事などは500万円まで)を一括贈与できる制度のこと。
ただし、贈与される側が30歳未満の個人であることが条件です。

教育費等の支払いが生じるたびに口座から出金できますが、贈与された側であるお子様等が対象となる出費に対する領収書やこれに準じる証明書等を金融機関に提出しなければなりません。

また非課税となる対象は、教育費等の支払いを直接賄う金銭等に限られますので、例えば不動産等を贈与して売却資金を教育費に充てる等の場合は対象にはなりません。

※こちらの制度は、導入当初は平成27年末までの予定でしたが、平成30年度末まで延長されています。
よって、教育資金の贈与が非課税となる期間は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に贈与された教育資金です。

参照元:国税庁 公式サイト「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」

結婚式のお金も非課税制度で借りられる?

結婚式のお金も非課税制度が活用できる

最近は身内だけの簡素な結婚式も増えてきていますが、人数を多く呼んだり手の込んだ結婚式を行うには約300万~600万程かかります。
親族を呼ぶときは、親も立派な結婚式をあげさせたいと考えているでしょうから、お金を借りる相談はしやすいのではないでしょうか。

結婚資金を借りるのは300万円まで非課税

先でお伝えした「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」により、結婚式や披露宴、新居への引っ越しなど結婚にかかる費用は、贈与税が非課税となる場合があります。

結婚にかかるお金と子育てにかかるお金を合わせて1000万円までが非課税となり、結婚にかかる費用は300万円までが対象となります。

非課税対象となるには、お金だけでなく条件がいくつかあります。
まず、お金を借りる側が20歳~49歳までであること、また、お金を貸す親は自分の親や祖父母でなければなりません。
配偶者の親から借りる場合は、非課税の対象から外れてしまいますので、注意が必要です。

非課税対象となる結婚資金の用途は?

結婚にかかるお金のうち、結婚式の会場費・衣装代、新居の敷金・礼金および引っ越し費用が、親から借りる場合でも非課税対象になります。

新婚旅行、駐車場を借りる場合の費用は非課税対象とはなりません。

また、親から借りたお金が余ったからと貯金したり、住居を買うお金に使った場合も非課税対象にはなりませんので注意しましょう。

手続きに行ったり、領収書の提出が必要になるので、非課税制度を利用するときはきちんと注意点を把握したうえで利用しましょう。

その他、非課税になる制度

結婚資金以外でも非課税になる制度があります。

相続時精算税制度

年齢が60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子どもまたは孫への贈与する際に、2500万円までは贈与税を非課税にする制度です。
相続時精算税制度を利用するメリットとして、数年間に渡り贈与を受けた場合でも2500万円の非課税枠を使えることです。
ただし、非課税枠はここまでですから、この金額を超えた金額について贈与を受けた場合は、超えた金額に対しての贈与税として20%課税されます

注意点として、相続時精算税制度を1度利用すると、暦年贈与でのひとりにつき年間110万円の非課税枠が今後は利用できなくなりますので気をつけましょう。

参照元:国税庁 公式サイト「No.4103 相続時精算課税の選択」

暦年贈与

その年の1月1日~同年12月31日の1年間に贈与された110万円まで非課税枠が使えます。

注意点として、暦年贈与では年間110万円の非課税枠を活用できますが、毎年同じ時期に同じ金額を贈与すると連年贈与とみなされ、国税局から指摘される可能性があります。

参照元:国税庁 公式サイト「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」

暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年間から7年間に延長し、延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない見直
しを行います。
※上記見直しは、令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。

引用元:財務省「令和 5年度 税制改正(案)のポイント」

住宅取得資金等の贈与税の非課税枠

住宅を購入する際の資金として、自分の両親または祖父母から生前贈与といった形でお金をもらう場合においての税制上の優遇措置です。
相続時精算税制度または暦年贈与のいずれかの併用も可能です。
なお、省エネ住宅などの住宅形態や契約を締結する日によって、非課税枠に格差が生じますので事前に確認しましょう。

参照元:国税庁 公式サイト「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

返済するときの注意点

借りた相手が親であっても返済するのは当然の義務です。
ここでは親にお金を借りた場合、返済時の注意点についてご紹介します。

自分の経済力に応じて返済できる必要最小限の金額を借りること

親からお金を借りる時に、とくに返済期日を決めずに「返済はお金に余裕ができた時で良いから」と親から言われると、つい甘えてしまい、返済が滞るケースも多々あります。
親からお金を借りた場合でもきちんと返済できるよう、自分の返済能力と経済力に応じて返済が可能な範囲の金額にとどめて必要最小限の金額を借りることです。

国税局からの調査にも万全な対策を!返済した証拠を残すこと

子どもが親からお金を借りる場合、単に借用書を残しておけばそれで良いというわけではありません。
贈与税の課税対象とみなされないように、借りた後は返済したことを証拠として表わす必要があります。

これを証明する方法はとても簡単で、通帳に記録を残すことです。
自分の銀行預金の通帳口座から親の通帳口座に振り込みをすれば、それぞれの通帳に記録が残ります。
銀行の窓口で振込み用紙に書いて振込み手続きを行う場合は、その控えを必ず保管しましょう。

銀行の通帳口座は単なる取引の記録ではなく、贈与ではないことを記す重要な書類なのです。

万が一返済が困難になった場合は契約の見直しも視野に入れよう

銀行や消費者金融でお金を借りて月々の返済が困難になった場合、月々の返済日や返済金額について条件を見直すことはまず無理ですが、親からお金を借りた場合は、仮に返済に困ることがあれば、親の了解が得られれば契約の見直しを相談することも可能でしょう。

この時に、条件を見直して今後も返済を継続するのであれば、贈与に関する問題は一切絡んできません。

親親子間の金銭トラブルが原因で家族の絆にヒビが入り、ブラックな関係になってしまわないように、返済に行き詰まりが見えてきたら、まずは早めに相談して契約内容を見直して無理のない返済に切り替えて、スムーズな返済を心がけましょう。

まとめ

まとめ

親からお金を借りる時は「贈与税」に注意!

1年間に借りるお金が110万円を超えると贈与税の対象。

贈与税対策は、借用書、利息、通帳の記録

贈与税の対象とならないために、お金を親から借りる場合でも返済額や期間などの条件、利息を決めて借用書を作成する。
親と子の間でお金の貸し借りがあったことがわかるように、銀行の通帳などに記録を残す。

結婚・子育てのためにお金を借りる場合は、贈与税が非課税に

結婚や子育てにかかる費用を、一括で1000万円まで(結婚資金のみでは300万円まで)、非課税で贈与ができる。

非課税になる結婚資金の用途

結婚にかかるお金のうち、結婚式の会場費・衣装代、新居の敷金・礼金および引っ越し費用が、親から借りる場合でも非課税対象。

監修者(ファイナンシャルプランナー)からのアドバイス

監修者(ファイナンシャルプランナー)からのアドバイス
一生のうち親含め親族から経済的(お金)に助けてもらうことが多いのではないでしょうか。今回の記事にもある通り、使用用途や金額に応じて税金が課せられます。好意や補助をしてくれたお金に後から税金を徴収されるなんて悔しいですよね。家族間といえどもお金の貸し借りでトラブルになることも多くあります。「借用書」などの書類作成は必須です。今回の記事を参考にしてください。

成川由利子氏の詳細はこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次