国や市役所からお金を借りる、個人向けの貸付制度について

みなさんがお金を借りる際にイメージする借入先というのはどういったものでしょうか?やはり、銀行や消費者金融が最初に浮かぶ人が多いと思いますが、国や自治体からお金を借りることができる、個人融資制度を知っていますか?

実はお得なのにあまり知られてはいない、この個人融資制度についてここでは詳しく説明していきます。
国からの個人融資であれば、金融会社のように高い利息を支払うこともなく、ほぼ無利子でお金を借りることも可能です。

目次

国からお金を借りる個人向け「生活福祉資金貸付制度」とは

国からの個人融資制度と言ってもその種類は多岐に渡ります。まずは、最もポピュラーな個人融資制度の「生活福祉資金貸付制度」についてご説明します。

生活福祉資金貸付制度ってどんな制度?

生活福祉資金貸付制度とは、生活が苦しい人にお金を貸し付け、支援する目的で設けられた制度です。また、仕事を辞めた人や、病気や怪我などにより働けなくなった人向けの制度とも言えます。
原則として連帯保証人が必要ですが、保証人なしでも貸し付けを受けることは可能です。一般的な金融会社よりも金利が格安で、
返済期間も数十年単位と長めに設けられており、また相談内容によっては、多少返済期間に融通をきかせてもらうこともできるため、安心して融資を受けることができる制度です。
生活福祉資金貸付制度には、大きく分けると「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保型生活資金」の4つがあり、さらにそこから資金の目的によって細かく細分化されます。

資金の種類と目的は以下の通りです。

資金の種類 資金の目的
総合支援資金 生活支援費 生活再建までの間に必要な生活費用
住宅入居費 敷金、礼金などの住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用
一時生活再建費 生活を再建するためにまかなうことが困難である、就職や転職のための技能習得及び債務整理等をするために必要な費用
福祉資金 福祉費 病気療養に必要な費用、住宅の増改築や補修などに必要な費用、福祉用具などの購入費用、介護サービスや障害者サービスを受けるために必要な費用 等
緊急小口資金 生計の維持が困難となった場合に緊急に貸し付ける少額の費用
教育支援資金 教育支援費 低所得者世帯の子どもが高校や大学などに修学するために必要な費用
就学支度費 低所得者世帯の子どもが高校や大学などへ入学するために必要な費用
不動産担保型生活資金 不動産担保型生活資金 低所得の高齢者世帯に対し、居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 要保護の高齢者世帯に対し、居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金

この中で最も一般的な借り方が総合支援資金です。生活福祉資金よりも、総合支援資金のほうが聞いたことがあるという方も多いかもしれませんね。
基本的に生活福祉資金に申し込むとなると、総合支援資金に申し込むことになります。

生活福祉資金貸付制度の対象となる世帯

①低所得世帯
(市町村民税非課税程度)
生活に必要な資金を他の制度から借りられない世帯
②障害者世帯 身体障碍者手帳、療養手帳、精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている
③高齢者世帯 65歳以上の高齢者が属している世帯

貸し付けの条件や利率、返済方法等はきちんと法律で定められています。それではその条件や貸付限度額などを順番に詳しく見ていきましょう。

公的貸付の融資条件や借り入れ限度額

貸し付けの条件や利率、返済方法等はきちんと法律で定められています。それではその条件や貸付限度額などを順番に詳しく見ていきましょう。

総合支援資金

総合支援資金の融資条件

  1. ①低所得者世帯で失業や収入の減少によって生活が苦しい
  2. ②公的な書類などで本人確認が可能である
  3. ③現在住居がある、または住居確保給付金の受給によって住居の確保が見込める
  4. ④自立相談支援事業、ハローワーク、社会福祉協議会などから、継続的な支援を受けられる
  5. ⑤融資が行われることで、自立した生活ができる
  6. ⑥他の公的給付または、公的な貸し付けを受けることができない

総合支援資金で融資を受けるには、上記の条件を全て満たさなければ審査に通ることはありません。

総合支援資金の貸付限度額

総合支援資金 資金の種類 貸付限度額
生活支援費 1人世帯 月15万円以内
2人以上の世帯 月20万円以内
※貸付期間は原則3ヶ月、最長12ヶ月以内
住宅入居費 40万円以内
一時生活再建費 60万円以内

総合支援資金の貸付利子と返済期間

総合支援資金では、連帯保証人がいれば貸付利子なしで融資を受けることができます。 保証人は原則必要で、同じ都道府県内に住んでいて、かつ、生計が別の人でしか認められません。
また保証人がいなくても申請は可能で、その場合でも年1.5%という破格の金利で貸し付けを受けられます。借金の返済期間も10年以内と余裕をもって返済することができます。

福祉資金

福祉資金の融資条件

  1. ①低所得者世帯で生活が苦しい
  2. ②65歳以上の高齢者のいる世帯である
  3. ③障害者世帯である
  4. ④融資が行われることで、自立した生活ができる
  5. ⑤他の公的給付または、公的な貸し付けを受けることができない

福祉資金では貸し付けの種類によって、上記の要件に当てはまる世帯が異なります。 総合支援資金は生活再建の総合的な援助を目的とした制度ですが、 福祉資金は「冠婚葬祭」「療養費用」「就職費用」などの、一時的に必要な費用の融資となっています。

福祉資金の貸付限度額

福祉費 資金の種類 貸付限度額
福祉費 最大580万円以内
※用途に応じて、貸付上限額が異なる
緊急小口資金 10万円以内

福祉費の資金用途は多岐にわたるため、それぞれに融資の上限額が定められています。

総合支援資金の貸付利子と返済期間

福祉資金も原則保証人が必要で、保証人がいれば貸付利子なしで貸し付けを受けることができます。 また、貸付限度額と同じく、用途によって返済期間も大きく左右されるので、利用時にはきちんと確認をしましょう。

教育支援資金

教育支援資金の融資条件

  1. ①低所得者世帯で生活が苦しい
  2. ②他の公的給付または、公的な貸し付けを受けることができない

教育支援資金の貸し付けを受けるには、上記2つの条件を満たす必要があります。 こちらはその名の通り、教育支援を目的とした融資となっています。

教育支援資金の貸付限度額

福祉費 資金の種類 貸付限度額
福祉費 最大580万円以内
※用途に応じて、貸付上限額が異なる
緊急小口資金 10万円以内

教育支援資金の貸付利子と返済期間

教育支援資金の最大のメリットは保証人が不要、かつ無利子で融資を受けられるということです。 ただし、世帯の中で連帯借受人が必要となります。 つまり貸し付けを受けた本人の他に、”借金を返済する人がもう一人必要”ということですね。 通常は保護者が連帯借受人となり、一緒に借金を返済していくことになります。返済期間は最長20年以内です。

不動産担保型生活資金

不動産担保型生活資金の融資条件

  1. ①低所得者世帯で生活が苦しい
  2. ②一定の住居に住んでおり、将来的に住み続ける(マンションを除く)
  3. ③世帯員は原則65歳以上
  4. ④配偶者と親以外の同居人がいない
  5. ⑤住まいに抵当権などが設定されていない

不動産担保型生活資金では、融資を受けるには上記すべての条件を満たす必要があります。

不動産担保型生活資金の貸付限度額(土地や建物の評価によって変動)

不動産担保型生活資金 資金の種類 貸付限度額
不動産担保型生活資金 土地の評価額の70%程度で上限は月30万円以内
※貸付期間は、借りた本人が死亡するまで または、貸付元利金が限度額に達するまで
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 土地や建物の評価額の70%程度 (マンションの場合は50%程度)で上限は生活保護受給額の1.5倍以内
※貸付期間は、借りた本人が死亡するまで または、貸付元利金が限度額に達するまで

不動産担保型生活資金では、上記のように建物の評価によって貸付限度額が変わります。

不動産担保型生活資金の貸付利子と返済期間

不動産担保型生活資金の金利は年3%または長期プライムレートとなっています。長期プライムレートとは、銀行などの金融機関が設定している再優遇金利のことです。返済期間は契約終了後3ヶ月以内となっています。

まずは相談から!生活福祉資金貸付制度の申込方法

貸付を認めてもらうためには必要な手続きをし、支援が必要だと認められなければいけません。

ここからは生活福祉資金貸付制度を利用するにあたっての必要書類や申し込みの流れについて簡単にご説明します。

生活福祉資金貸付制度はどこで申し込みをすればよいの?

生活福祉資金貸付制度に申込みをするためには、生活福祉資金貸付制度の窓口となっている「都道府県社会福祉協議」へ相談するところから始まります。
ここで現在の生活状況を説明したり、生活福祉資金貸付制度についての説明を受けます。
相談結果によって、貸付可能な状況であると判断されれば、実際に必要書類を用意し、都道府県社会福祉協議へ申し込みをします。

申し込みに必要な書類は?

基本的に必要な書類としては

  • 健康保険証や住民票の写し
  • 世帯状況を証明出来る書類
  • 連帯保証人の資金力を証明する書類
  • 失業中の方は自立のための計画書
  • 障害者は障害者手帳

などです。
ただ、生活福祉資金貸付制度には様々な貸付の種類があるため、それぞれの条件によって提出書類も変わってきます。

例えば住宅入居費の申請には「不動産や賃貸の契約書類」、福祉費であれば「経費見積書」、教育支援費を希望なら「入学許可通知書」「在学証明書」などといった書類も別途用意しなければいけません。必要書類を全てを提出することで審査が行われ、数週間後に審査結果が通知されます。

審査を通過したら?

無事審査に通過することが出来たら、印鑑証明書と借用書を用意し、都道府県社会福祉協議へ提出します。その後、金融機関の口座へ貸付金が振り込みされる流れとなります。実際にお金が振り込まれるまでは、3週間~1ヶ月半程度かかるので注意が必要です。

このように生活福祉資金貸付制度を利用して個人融資を受けるには、それぞれ条件があります。しっかりと比較して、自分に合った制度、貸付を利用しましょう。
市役所でお金を借りる方法がある!生活福祉資金貸付制度なら無職もOK

その他の国からの個人融資制度

国からの個人融資制度は生活福祉資金貸付制度だけではありません。次からはその他の個人融資制度を見ていきましょう。

母子父子寡婦福祉資金貸付金

ひとりで子育てをしている方には、「母子父子寡婦福祉資金貸付金」という制度があります。母子父子寡婦福祉資金貸付金とは20歳未満の児童を扶養しているシングルマザーまたは、シングルファーザーが対象の制度です。

母子父子寡婦福祉資金貸付金ってどんな制度?

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは母子又は父子家庭の方が、生活資金や医療費、住宅資金、奨学金、子供の結婚資金などの支援が受けられるもので、ひとりで子育てをし生活が困難な方におすすめの制度です。母子父子寡婦福祉資金貸付金も原則連帯保証人が必要になりますが、利子や返済などの条件を満たせば、連帯保証人がいなくても貸し付けを受けることができます。利息は、連帯保証人が要る場合は無利子、連帯保証人がいない場合でも金利1.5%でお金を借りることができます。

母子父子寡婦福祉資金貸付金には、「母子(父子)福祉資金」と「寡婦福祉資金」の2種類があります。貸し付けを受ける対象が子になる場合は母子(父子)福祉資金、対象が母または父になる場合は寡婦福祉資金となります。申し込み条件は、各都道府県によって異なりますので、利用する際は自治体に確認をしてください。

母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付限度額

資金の種類 対象者 貸付限度額 利子
事業開始資金 285万円 保証人あり 無利子
保証人なし 年1.0%
事業継続資金 143万円
技能習得資金 月額6.8万円
就職支度資金 母・児童 10万円
住宅資金 150万円
転宅資金 26万円
結婚資金 母・児童 30万円
生活資金 月額14.1万円
医療介護資金 母・児童 医療費34万円
介護費50万円

上記の他にも、奨学金として利用できる修学資金あります。

「修学資金」は高等学校、大学、高等専門学校(専修学校)に修学するための交通費や書籍代、授業料などに必要な資金を貸し付けてもらえます。

修学資金の貸付限度額

学校区分 貸付限度額 利子
高校、専修学校(高等課程)
高等専門学校[1~3年]
月額5.25万円 無利子
(親または児童を連帯保証人とする)
高等専門学校[4~5年] 月額9.0万円
短期大学、専修学校(専門課程) 月額9.0万円
大学 月額9.6万円
大学院(修士課程) 月額13.2万円
大学院(博士課程) 月額16.8万円
専修学校(一般課程) 月額4.8万円

卒業後6ヶ月は据え置き期間となり、すぐに返済する必要はない上に5~20の期間をかけてじっくり返済していけます。

「修学支度資金」は、修学・修業するために必要な制服や用具などを購入する資金を貸してもらえます。

修学支度資金の貸付限度額

学校区分 貸付限度額 利子
小学校 4.06万円 無利子
(親または児童を連帯保証人とする)
中学校 4.74万円
国公立高校等 16万円
修業施設 10万円
私立高校等 42万円
国公立大学・短大・大学院等 38万円
私立大学・短大・大学院等 59万円

母子父子寡婦福祉資金の審査

母子父子寡婦福祉資金には、融資を受けるための審査があります。母子(父子)家庭であるのとは別に、下記の条件を満たしている必要があります。

  1. ①カードローンなどの借金がない
  2. ②自己破産者ではない
  3. ③世帯に一定の収入がある
  4. ④60歳未満で健康である
  5. ⑤他のローンの保証人になっていない

母子父子寡婦福祉資金の申し込み方法

母子父子寡婦福祉資金の申し込み窓口は、各市区町村の役所、または福祉事務所で、申請前に事前相談が必須となります。以下が母子父子寡婦福祉資金申し込みの流れです。

  • ①福祉課で生活相談をする

  • ②申請書提出

  • ③各都道府県が審査を実施

  • ④借用手続き

  • ⑤貸付金の交付

申し込み時に必要な書類

  • 貸付申請書
  • 返済計画書
  • 個人情報の取り扱いに関する同意書
  • 課税証明書や銀行通帳の写し等の年収証明
  • 納税証明書
  • 戸籍謄本
  • 世帯全員の住民票

上記に書類+その他の貸付金に応じて必要な書類を提出します。実際にお金が振り込まれるまでには、2週間~1ヶ月程度かかるので、注意しておきましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付金のほかにも、日本金融公庫の「国の教育ローン」等などの貸付制度もありますので、国からの個人融資を希望される方は、一度対応する窓口などで相談をしてみると良いでしょう。

まとめ

国から借りる生活福祉資金貸付制度とは?

生活が苦しい人、病気やケガなどで働けなくなった人に貸付、支援する制度。
金利は格安で、返済期間も長め。

融資条件や限度額

使用目的によって資金制度が分かれ、それによって条件や限度額も変わってくる。
自分がどこに当てはまるのか調べてみる必要がある。

申し込み方法

まずは、都道府県社会福祉協議へ相談。
審査に通っても、実際にお金が振り込まれるのは3週間~1カ月半ほどかかるので、即日融資は不可能。

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